あたしは。
ちょうど、去年の今頃。
もう人生なんて、どうでもいいって思っていた。
拓也と描けない未来。
お父さんのリストラ。
家庭は癒やしの場所じゃなくなり。
仕事も3月からは後方の品出し係りをやれと言われ、結局は人が足りない部門の補助で、便利使いされ。
ヤツへの気持ちは断ち切れぬまま、でももう終わりなんだと思っていた。
そんな時に出会ったあの人は、あたしにとって救世主だと思った。
もっと強くなりたい。
もっと仕事出来るようになりたい。
もっと愛されたい。
もっと必要とされたい。
もっと。もっと、もっと…。
今考えれば、すごい欲の塊だったんだな。
今それがおさまっているのは、すべてに満たされているからじゃない。
手に入れたから。
でも、手に入れただけじゃ、満足出来なくなってる。
ちゃんと、手に入れたもので満たされないと。
満足出来てない自分がいる。
そもそも。
満足しようとする事自体が、間違いなのかもしれない。
いつだって満たされない、そのハングリーな部分で、上を目指していくのかもしれないから。